老舗食品メーカーが受発注業務の自動化で残業ゼロを達成するまで
BridgeFlow導入事例
「残業が当たり前になっていて、誰も疑問を持たなくなっていた」 今回ご紹介するA社の営業事務チームリーダー・木村さん(仮名)は、プロジェクト開始当初をそう振り返ります。創業80年以上の食品メーカーA社(従業員数約200名)。長年の慣習として根付いた受発注業務の非効率が、BridgeFlow導入によってどう変わったか。課題の発見から、導入の意思決定、現場の抵抗、そして定着に至るまでの全プロセスを詳しくご紹介します。(一部、守秘義務の観点から情報を変更・抽象化しています)

A社について
A社は創業1940年代、地方の老舗食品メーカーです。醤油・味噌・ドレッシングなどの調味料を中心に製造・販売しており、スーパーマーケット・業務用食品卸・ECサイトを通じて全国に商品を届けています。 従業員の平均年齢は48歳。デジタルツールへの親しみはまだ浅く、業務の多くが紙・FAX・Excelを中心に回っていました。「昔からこうやってきた」という文化が根強く、システム化への抵抗感も一部にありました。そんな環境の中で、BridgeFlow導入はどのように進んだのでしょうか。
導入前の課題:3つの「見えない損失」
A社の受発注業務は、FAXやメールで届く注文をExcelに手入力し、社内の複数部署(営業・製造・物流)に個別にメールで展開するという流れでした。一見「機能している」ように見えましたが、詳細を掘り下げると3つの深刻な課題が浮かび上がりました。 課題1:膨大な手作業による時間の損失 1日平均150件の受注処理に、担当者1人あたり3〜4時間を費やしていました。受注内容をExcelに入力し、製造部門・物流部門・経理部門それぞれに異なるフォーマットで転記・送付する作業が毎日繰り返されていました。月末・期末は注文が集中するため、残業は常態化。繁忙期には月間残業時間が一人あたり40時間を超えるメンバーもいました。 「この作業、本当に私たちじゃないといけないのか、と思い始めたのは最近のことです。ずっと当たり前だと思っていたので」(木村さん) 課題2:転記ミスによるクレームとその対応コスト 手入力・転記のプロセスが多いため、出荷数量や納品先の誤りが月に2〜3件発生していました。件数だけ見ると少なく感じるかもしれませんが、1件のミスが発生すると、謝罪連絡・再出荷手配・返品対応・社内報告書作成に平均4〜5時間を要します。月2〜3件で換算すると、月間8〜15時間がミスの後処理に消えていた計算です。クレームを受けた取引先との関係修復に要する無形のコストも含めると、損失はさらに大きくなります。 課題3:属人化による業務継続リスク 受発注の全体フローを把握しているのは、10年以上この業務を担当してきたベテランの鈴木さん(仮名)ただ一人でした。鈴木さんが休むと業務が止まる、あるいは他のメンバーが対応しようとして誤りが増える、という状況が続いていました。 「鈴木さんが有給を取ると、正直みんな焦るんです。マニュアルはあるんですが、現場の判断が必要な場面が多くて、結局電話で聞くことになる」(木村さん) この3つの課題は、単独では「大きな問題ではない」と見過ごされがちです。しかしテックブリッジのヒアリングを通じて定量化したところ、年間に換算した損失時間は約2,400時間(担当者3名合計)、そのコスト換算は人件費ベースで約720万円に達することが明らかになりました。この数字を経営層に示したことが、投資判断を後押しする大きな要因になりました。
なぜBridgeFlowだったのか
A社がBridgeFlowを選んだ背景には、いくつかの検討プロセスがありました。 候補として挙がったのは、BridgeFlowのほかに国内の大手グループウェア系ワークフローツール2製品と、海外製のiPaaS(Integration Platform as a Service)ツール1製品の計4製品です。 評価軸は以下の5点でした。 現場担当者(IT非専門職)が自分でフローを設計・変更できるか 既存のFAX受信システム・Excelファイルとの連携が可能か 導入コストと月額費用が予算内に収まるか 日本語サポートと導入支援体制が充実しているか 操作画面が直感的で、ITリテラシーが高くないメンバーでも使えるか 海外製ツールは英語UIと日本語サポートの薄さが懸念材料となり早期に除外。国内ツール2製品は機能的には要件を満たすものの、フロー変更のたびにIT部門への依頼が必要な点と、FAXとの連携に追加開発コストが発生する点がネックでした。 BridgeFlowが選ばれた決め手は「現場が自分で変えられること」でした。 「最初のシステムを作ってもらった後、季節ごとに業務のやり方が微妙に変わるんです。その度に業者さんに連絡して見積もりを取って…というのが嫌でした。自分たちで直せるなら、それが一番だと思いました」(木村さん) また、テックブリッジの担当者が初回提案の段階でFAX連携のサンプルフローをその場でデモしてみせたことも、「本当にできるんだ」という安心感につながり、意思決定を後押ししました。
導入プロセス:8週間で「動くもの」を作る
契約締結後、テックブリッジはA社との合同プロジェクトチームを発足させました。A社側からは木村さんを含む営業事務チームの3名と、IT管理担当の1名が参加。テックブリッジ側からはプロジェクトマネージャー1名、フロー設計担当エンジニア1名、カスタマーサクセス担当1名の計3名が関与しました。 第1〜2週:業務の徹底的な可視化 まず行ったのは、現状の業務フローを「見える化」することです。木村さんたちに実際の業務をやってもらいながら、テックブリッジの担当者が隣でメモを取り、フロー図を描いていきました。 この作業を通じて明らかになったのは、「公式のマニュアル」と「実際の業務」が大きく乖離しているという事実でした。例えば、特定の大手取引先からの注文は通常フローとは異なる特別対応が必要で、その判断は担当者の経験と記憶に依存していました。こうした「暗黙の例外処理」を一つひとつ洗い出すことが、この段階の最重要作業でした。最終的に、通常フロー1本と例外フロー7パターンの計8フローが設計対象として特定されました。 第3〜5週:フロー設計とプロトタイプ作成 洗い出した業務フローをBridgeFlow上で設計しました。このフェーズでは、木村さんたちが実際にBridgeFlowの管理画面を触りながら進めることを重視しました。「作ってもらう」のではなく「一緒に作る」スタンスです。 最初の1週間は木村さんも「難しそう」と感じていたそうですが、2週間目には「ここ、自分で直せました」という連絡が来るようになりました。この体験が、後の「自分たちで運用できる」という自信につながっています。 FAXで届いた注文書のOCR読み取り→BridgeFlowへの自動取り込み→担当者による確認・承認→製造・物流・経理への自動通知、という一連のフローが5週目末に完成し、社内テストを開始しました。 第6〜7週:テストと現場フィードバックの反映 社内テストでは、想定外の問題がいくつか発生しました。最も大きかったのは、FAXの読み取り精度の問題です。手書きの注文書や、インクがかすれたFAXでは数字の誤読が発生するケースがありました。 対応策として、OCR読み取り結果に対して担当者が目視確認するステップを設け、金額・数量の欄のみハイライト表示することで確認負荷を最小化しました。完全自動化ではなく「確認しやすい半自動化」とすることで、精度とスピードのバランスを取りました。 また、長年ベテランの鈴木さんが担ってきた「特定取引先への特別対応」について、鈴木さん本人にBridgeFlowのフロー設計画面の前に座ってもらい、「自分の判断基準」をフロー上の条件分岐として言語化する作業を行いました。この作業は鈴木さん本人にとっても「自分がやってきたことの整理」になったと好評でした。 第8週:本番リリースと初期サポート 8週目に本番リリース。最初の2週間はテックブリッジのカスタマーサクセス担当が毎日チャットで状況確認を行い、問題があれば即日対応しました。リリース後3日間は旧来のExcelフローと並行運用し、出力データの突き合わせ確認を実施。問題がないことを確認した上で、旧フローを完全に停止しました。
導入後の変化:数字で見る効果
導入から3ヶ月後、以下の変化が定量的に確認されました。 受注処理時間:1人あたり3〜4時間→45分(約75%削減) 月末・期末の残業時間:平均28時間→0時間 転記ミスによるクレーム:月2〜3件→0件 業務マニュアルの更新頻度:不定期(年1回程度)→フロー変更と同時に自動反映 新人が独力で受注処理できるまでの期間:平均3ヶ月→2週間 金額換算での効果(当社試算): 削減された残業コスト:年間約240万円 クレーム対応コストの削減:年間約90万円 業務効率化による生産性向上(時間価値換算):年間約380万円 合計:年間約710万円の効果 BridgeFlowの年間利用料(A社規模・スタンダードプラン)は約120万円のため、初年度から約590万円のネット効果が生まれています。

導入後の展開:BridgeFlowの活用範囲を広げる
受発注業務での成功を受け、A社では現在BridgeFlowの活用範囲を拡大中です。 2025年1月から着手しているのは、返品・クレーム対応フローのデジタル化です。現状は電話・メモ・Excelで管理されているクレーム情報をBridgeFlowに集約し、対応状況のリアルタイム可視化と、再発防止レポートの自動生成を目指しています。 また、製造部門からは「生産計画の共有フローを作りたい」という要望が自発的に上がってきています。受発注改革の効果を社内で見ていた製造部門のメンバーが、自部門の課題解決に使いたいと手を挙げてきたのです。「現場が自らデジタル化を求め始めた」という状況は、A社のDX推進が確実に次のステージに進んでいることを示しています。
この事例が示す3つの教訓
A社のプロジェクトを振り返ると、DX推進で成果を出すための普遍的な教訓が3つ浮かび上がります。 教訓1:「見えない損失」を数字にすることが投資判断の鍵 「なんとなく非効率」という感覚を、時間・金額に換算することで、経営層の意思決定が変わります。A社でも、年間720万円の損失という数字が出た瞬間に、議論の質が変わりました。 教訓2:現場の「抵抗感」は情報と体験で解消できる ITに不慣れな現場でも、「自分で触って、自分で変えられる」体験を早期に提供することで、抵抗感は自信に変わります。ツールの説明より、一緒に触ることの方が何倍も効果的です。 教訓3:「完璧」より「動くもの」を早く作る 8週間でリリースしたフローは、設計当初の想定より不完全でした。しかしリリース後に現場から得たフィードバックの方が、事前の要件定義より正確で有益でした。完璧を待つより、早く動かして学ぶ方が、最終的には速く正しいゴールにたどり着けます。 BridgeFlowの導入を検討されている方、あるいは「自社の受発注業務を改善したい」とお考えの方は、ぜひテックブリッジまでご相談ください。A社と同様に、現状の業務フロー分析から丁寧にご支援します。